ミスコンは誰のもの――2019年ミス慶應ファイナリスト13人乱立と2015年ミス東大南北朝時代の話

ミス慶應の候補者が発表されてで炎上しているの最高かよ。

 

さて、2019年のミス慶應コンテストを開催する団体として、「ミス慶應コンテスト2019実行委員会」(以下実行委員会)と「学生団体KOPURE」(以下KOPURE)の2つが名乗りを上げておりまして、今バチバチしてます。対岸の火事はエンタメです。

Twitterでは、炎上もあってKOPURE側の候補者の方が拡散されているといった情勢でしょうか。

 

↓こっちが実行委員会ミスコンの候補者で

ミス慶應コンテスト2019公式サイト | ミス慶應コンテスト2019実行委員会

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↓こちらがKOPUREの候補者たちです

ミス慶應コンテスト2019

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例年ミス慶應は6人程度のファイナリストを選抜しており、他大学に比べても候補者の多いミスコンだったのですが、今年は2つの運営で候補者も2倍、まさかの13人になりました。

 

ミスコンって、構造上こういうトラブルにやたらと弱いな、とつくづく思います。この記事では2015年ミス東大の運営が分裂していた話もしながら、ミスコン運営団体の特色と学生団体ゆえの弱みを挙げ、利権争いの見どころを解説していきます。

 

2015年ミス東大南北朝騒動の話

実は、2015年にも東大で、ミスコンの運営団体が2つ存在するという騒動がありました。最終的には片方のミスコンが途中で取りやめになり、候補者の発表をしなかったため、たいした騒ぎにはなりませんでした。

営団体のひとつは毎年ミスコンを運営していた広告研究会(以下広研)、もうひとつはミス東大実行委員会、こちらは東大美女図鑑を運営するSTEMS UTが新設して実権を握っていた団体になります。ややこしいので、後者のことは美女図鑑ミスコンと呼ぶことにします。

ともかく、2015年の東大ミスコンは広研と美女図鑑、2つの運営によって開催されようとしていました。これを僕はミス東大南北朝時代勝手に呼んでます。

 

多くの大学で広告研究会という名称のサークルがミスコンを開催しており、東大の広研もこの例に漏れずミスコンを主な活動としています。

一方で、東大美女図鑑は学祭で写真誌を販売している、2013年に設立された比較的新しい団体です。本当はSTEMS UTという団体名ですけれど、コンテンツ名称の方が遥かに有名ですね。HISの騒動で見聞きした方も多いのではないでしょうか。詳しくは↓のWikipediaをご覧ください。運営者本人が執筆していますので、記事がやたらと充実しています。

東大美女図鑑 - Wikipedia

 

分裂が起きた理由は、2014年のミス東大候補者と広告研究会の間で金銭トラブルがあったためだとされています。ミス東大に選ばれた女性は美女図鑑からもお誘いがかかるので、2014年のミス東大ファイナリストは全員モデルとして美女図鑑に参加していました。ミス東大が広研に不信感を募らせているのを見て、「だったら俺らで健全なミスコンをやろう」と美女図鑑運営が舵を切ったのです。

ここまでならイイハナシダナーと思わないこともないのですが、実際にはこの金銭トラブルにおいて広研にさほど非が無かったこと、そしてミスコンを乗っ取ろうとするかのような強硬な態度は目に余るものがありました。ミス東大実行委員会という、「それっぽい」名前の団体を作ったり、2014年度の候補者が美女図鑑のメンバーであるのを利用してビラに候補者たちの写真を掲載したり、商標の出願をしたり。

 広研のミスコンが例年どおり行われる運びになったため、美女図鑑ミスコンは立ち消えになりました。そりゃそうだと思います。すでに美女図鑑ミスコンの候補者の選考は終わっていたとの噂でしたが、本家が開催されてしまったらミス東大のハクが付かなくなってしまい、その後に残るのは「ミスコンに出たがるような女」の肩書だけですもの。

美女図鑑ミスコンに応募した女性らは、そちらに応募した手前、広研ミスコンには参加しませんでした。これが何を引き起こしたかというと、人材不足です。

 

こんな僕も、まだ自分の身が可愛いので、特に何が言えるわけではないのですが、その、下に前後の年のミス東大の写真を載せますので、何かを感じ取ってください

 

2013年

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2014年

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2015年

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2016年

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ミスコンの特色と問題点

過度に一般化しすぎている気もしますが、ミス東大南北朝から得られた知見は以下のようなものです。

・利権争いというよりは、理念だったり素朴な人間関係がベースにある

・昨年度のミスコンを引き継いだようなテイで正当性を主張しがち

・学生団体は普通、商標や権利を持たないのでいつでもだれでも乗っ取り可能

・その割には注目度が高いので、「ミス●●」を名乗ることに価値が出てしまう

・大学や学校祭実行委員会の権限が小さく、学生の自主性が高い大学ほどこういったトラブルは起きやすい

・他大学とのミスコン運営団体とのコネクションが大事

・正当性を主張するプロセスにおいて、手持ちの女の顔の良さで戦うポケモンバトルになりがち

 

 

今後の論点

以上を踏まえて、今後のミス慶應の見どころですが…

 

●ミスコンポータルサイトは実行委員会の肩を持った

misscolle.com

各大学のミスコン運営団体は互いに交流があり、投票をポータルサイト経由で管理しています。当然、前年度以前から交流のある実行委員会のほうが有利です。このサイトに載った方が正統に見えますよね。

また、まだKOPURE側は投票を開始していませんが、投票システムがあまりにお粗末だと結果の信憑性、公平性が損なわれてミス慶應の称号の価値すら毀損しかねませんので、これを今から自作するとなると頑張ってほしいところです。

 

●11月の三田祭に参加できるのか?

トラブルを起こす以前は、ミス慶應のグランプリの発表は三田祭の企画として行われており、多くの来場者を引き付ける目玉企画の一つでした。

しかし、実行委員会による2018年のミス慶應コンテストは、フィナーレの発表を学校祭ではなく、外部の施設で行っています。

 

2019年は5月上旬に三田祭実行委員会が参加受付会を行っており、現在サークル間の調整を行っている段階かと思われます。

もし、両者ともが三田祭への参加申し込みをしていた場合、三田実、そして大学はミスコンステージを容認するでしょうか……?(両方とも落とすのに100円賭けます)

 

●結局ファイナリストたちがどれだけ人気を稼げるか

大多数の人たちにとって、どちらのミスコン運営が真摯な態度であるか、なんて話はそもそもどうでもいいことで、美人が見たいですよねえ。綺麗な女性を囲っている方が強い、というのは少し下品だな、と思わなくもないですが。(補足しておくと、ミスコン運営にはそれなりの割合で女性もいるので単純に男性が女性を従えているというだけでもありません)

メディア人気が爆発しさえすれば、その子がミス慶應です。グランプリ獲ってなかろうが関係ありません。小林亮太くんより砂川信哉くんの方が有名なのです。

 

●でも、ミスコンは誰がやってもいい

ミスコンは誰のもの、なんてタイトルにしましたけれど、本当は誰がやったっていいんです。自分で学祭に申し込んで、自分をグランプリにねじ込むのも自由です。

だから、ずっと2つの団体があったっていいんじゃないですか。

2,3年もすれば大学のサークルの中の人間は入れ替わるし、一時的に仲違いしていたとしても、結局人種が一緒なのでそのうち合理性を求めて一つに戻る気がします。

 

 

 

 

 

おまけ・ミスキャンパスの商標の話

美女図鑑側の運営メンバーが2015年に「ミス東大」で商標出願していたことがあります。まさか通りはしないだろうか、とチェックしていたところ、2016年に知財防衛株式会社という迫力のある社名の会社が「ミス東大」の出願を行いました。

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どこかから第三勢力出てきたぞ…と思いきや、同時に「ミス慶應」などでも商標の出願をしており、商標トロールの類のようです。

この知財防衛株式会社、ウェブサイトがシビれるので是非ご紹介したかったのですが、現在サイトが無くなってしまっているので、こちらのブログから雰囲気をご覧ください。

shigeo-t.hatenablog.com

これらの商標出願はすべて拒絶されていますので、現状、大学の名前を含むミスコンは商標登録されていません。

菅井くんは「東大美女図鑑」の語でも商標出願をしていたのですが、そちらは当人たちが作り上げたコンテンツにもかかわらず拒絶されていましたので、やはり大学の名前を含む商標と言うのは難しそうです。

 

 

 

 

おまけその2・僕は東大美女図鑑が嫌いです

個人的な因縁とか、ミスコン闘争を抜きにして、美女図鑑というものがあまり好きではありません。「お前がブスだから嫉妬してるだけだろ」と中の人らには陳腐な合理化をされそうですが。

 普通フェミならミスコンにも反対するだろうと思うのですが、僕のラインはミスコンを許容し、美女図鑑を嫌悪するところに引いてあります。

もし、モデルとして参加する側の人間だったなら、美女図鑑に参加してミスコンに出ないのは現状賢い選択かと思います。タレントやアナウンサーとしての道に進みたい場合も、そっちの方が上品ですよね。個人として売れる兆しのある時にようやく名前が出回るし、売れない・売りたくない側の人間なら名前はミスコンほど消費されずに済む。

 実際、中にいる人たちは楽しいだろうし、Win-Winでしょう、誰がそれに文句を言えるのかという状況ではあるのですが、それでも僕は嫌いです。

 

一体何が嫌いなんだ、何がミスコンと違うんだ、というと、人数と人の集め方です。あとはタテマエに共感できない。

 

ミスコンは結局、応募した人間の中だけでしか戦いませんし、候補者は一般に3~6人程度です。本当はもっと応募者がいますし、応募して落ちた女子の話はゴシップとしては最高に面白いのですが、それはさておき。

ミスコンというのは関わらなければ関わらないでいられるものです。数千人の女子の中の、たった4人の話です。

ところが、これをスカウト制にして、人数を増やすと、途端に性質が変わってくる。

アンチ美女図鑑の女性の一人に、女友達と2人で歩いていたら友人だけが美女図鑑に勧誘された、というショッキングなエピソードを持つ方がいます。これは極端な例であると信じたいのですが、スカウト制はこういう性質を持ちます。ミスコンに申し込んでいない人間を、勝手に土俵に引きずり込み、品評する。

それから、人数が増えると、抜群の美人ばかりではなく身近で親しみやすい印象の女子の割合も増えてきます。これによって「出たいけど出られない」という人数は単純に増えます。サークル内でならちょっと可愛いかなぐらいの人間を再審査する機関として冷酷に(ときどき大雑把に)働く。

 

人間は日常的に無意識のミスコンに晒されてはいるものの、ミスコンそのものからは距離を置くことができるのに、美女図鑑はその距離を詰めてしまい、競争を可視化しすぎるのではないかと感じてしまうのです。外から鑑賞する人の視点ではなく、中にいるひとたちの話です。

能力主義自体は否定しないけれど、程度問題はあるよねえ。

 

ついでに言うと、大学当局が学祭に強い決定権を持ち、学祭実行委員挟んで積極的にミスコン運営に口出しした国立大はもっと嫌いです。