志摩スペイン村以上に人がいないレオマワールドというテーマパークの話を聞いてほしい

「人がいない!」と自虐CMを打った過去はどこへやら、最近の志摩スペイン村はそこそこ盛況している。来場者増のきっかけになったVTuber周央サンゴとのコラボ、スペインの風景を生かしたポケモンSVとのコラボで遠方からの来場者を獲得することに成功しているようだ。

 

だけれど、世の中には本当に人がいないテーマパークというものがある。

 

レオマワールド香川県丸亀市にある、四国唯一のテーマパークだ。

このレオマワールド、とにかく人がいない。それも、パルケエスパーニャと違い、客に加えてスタッフとキャラクターがいない。

 

○足りてないキャラクター

入場ゲートに向かう道には中央に主要キャラクターの像と、壁に全キャラクターの写真・イラストがある。主要キャラの2匹はペディーとポーリーという名前だ。その他のキャラクターは11体もいて覚えられないし覚える必要もあまり無いので割愛する。

f:id:tomananaco:20250315224901j:image

一緒に行った連れはペディ―のことを「ドナ●ドダックに似ている」と言っていた。私はトゥイ―ティーにも似ていると思っている。

 

・レストランの洗礼

入場ゲートをくぐってすぐ、本当にすぐのレストラン。

ペディ―の旗がはためくすぐ隣で、他社キャラクターのお子様プレートが販売されており面食らう。大人としてはそこは自社キャラのペディ―くんの皿に載せろよ!と思ってしまうけど、子供に楽しく食事させるにはこうするより無いのかもしれない。

入場早々、テーマパークとしてあるまじき他社キャラの登場に不安を覚えたが、後になって思えばパーク全体がこんな感じのカオスさだった。

 

・パレード中止、キャラグリ無し

私が訪れた日は小雨だった。朝イチは降っていなかったのだが、昼になるにつれて雨が降り始めた。といっても大した雨ではなかったので、傘をささずにパークを回れるぐらいだった。

しかしこの雨により、パレードの中止を中止する旨が昼頃にアナウンスされた。そして、ついにこの日レオマワールド内でキャラクターに会うことはできなかった。

入場時は中止のお知らせが無かったあたり、ダンサースタッフは出勤していただろうから、たぶん、山車を雨に晒して故障することを極端に恐れているのだと思う。キャラグリも無かったが、これは雨の影響なのか、コロナ明けという来園時期が悪かったのか、単にキャラグリがいつも少ないのかわからない。

 

・パークを探してもキャラがいない

パレードの中止を知った時の私は、どこかでキャラグリしていないものかと、ヒロインキャラクターのポーリーの名を冠した建物『ポーリードリームハウス』に向かった。キャラグリがあるか、無くてもミニーの家みたいにキャラの背景ストーリーを楽しめる建物だろうと思っていた。

マップを頼りにたどり着くと、そこはやや広めのワンルームが花で飾ってあるだけの部屋だった。気持ち程度にポーリーのオブジェが配置してある。

(画像は公式サイトより)

公式サイトで見られるこの写真以上のものは何もない。キャラのオブジェと花、それらが置いてあっても持て余す部屋の空間。それがポーリードリームハウスのすべてだった。

 

・不必要に増える新キャラクター

レオマワールドのアトラクションで私が一番気に入ったのはレインボーバンディットという室内ライド。ピーターパン空の旅みたいなアトラクションと言えば伝わるかもしれない。

オリジナルの音楽や世界観を提示してくれる、これこそテーマパークという感じの楽しいアトラクションだった。レールや床が丸見えとか、隣のシーンの音楽がやたら大きくて音が混じるとか、複雑な造形をした主人公格の人形ほど壊れたまま動かないとか、細かいアラはあるが、そんなのはご愛敬。

大問題なのは、このアトラクションにはオリジナルのキャラクター、レローラ姫一行が存在するため、このアトラクションを見てもパークのキャラであるペディーやポーリー、その他大勢たちのストーリーが全く深まらないところ。こんなに出てこないのになぜパークのキャラが13体もいるのか。

 

・あふれる他社キャラクター

このほかのアトラクションにもとにかく自社キャラクターが出てきてくれない。ペディ―ドライブという100円玉入れたら動く子供向けの乗り物が自社キャラクターを描いてある唯一のアトラクションだと思う。

単に自社キャラが出てこないだけでなく、さっきのレストランの皿よろしく、園内を歩いているとやたら他社キャラを目にする。

常設アトラクションにトーマスもいる。

(画像は公式サイトより)

 

空中をぐるぐる回る遊具のウサギすらメナードランドのウサギに見えてくる。

※メナードランド:かつて岐阜県関ケ原に存在した遊園地。2001年閉園。

 

 

○足りていないスタッフ

三連休の中日のレオマワールドは思ったよりも人がいた。混んでいる、とはとても言えないが、視界には誰かしら客がいるような状態だ。

とにかく人がいない!と周央サンゴに叫ばせたパルケエスパーニャが念頭にあったため、これは意外だった。少なくとも、スタッフよりは客が多かったし、アトラクションが0分で回れるようなことは無かった。むしろ、許せないほどに待たされる。

 

・メリーゴーランド

各アトラクションには2人スタッフがいればいい方で、アトラクションによってはワンオペしている。

次の回ですぐ乗れそうなぐらいに客が少ないのを見て、私たちはメリーゴーランドの列に並んだ。前の回のメリーゴーランドが止まり、客の入れ替えが始まったが、なかなか列が進まない。スタッフは前の客と何やら話し込みながらゆっくり順番に案内していく。

ようやく私たちの前に来たスタッフは「説明は聞かれましたか?」との第一声。(お前がしてなければ無いですね)と言いたくなるのをこらえて、「聞いてないです」と返すと、彼は私たちに向けて、床の色が黄色いエリアの馬は上下運動しません、という旨のことを30秒ぐらいかけてゆっくり説明してくださった。

そして私たちの後ろのグループに再び、「説明は聞かれましたか?」と質問していった。いちいち聞かずに大きな声で複数グループに一気に伝えればええやん。こんな調子なので、メリーゴーランド一回の入れ替えに15分ぐらいかかっている。並んだ時には空いてるから次の回にすぐ乗れそうだなと思っていたのだが……

たぶん、三連休だからこれでも人が入っているだけで、いつもはもっとガラガラで、退屈に耐えるために仕事をわざとダラダラと回す癖が染みついているのだ。こんなわけで、各アトラクションの列の長さに対して待ち時間がかなり長い。

 

・やる気のないスタッフ

さっきのメリーゴーランドのスタッフをはじめ、基本的にスタッフが楽しそうではない。特に大学生ぐらいの年齢の若い男性スタッフは全体的に接客がひどかった。一番酷いのだと、アトラクションの前に、無表情で突っ立っているという人がいた。客が近づいても、アトラクションの中に案内しようという気が無い。こちらが「まだアトラクションやってますか?」と聞いても「はあ、まあ……」というリアクションなのには流石に閉口した。

わざわざ遊園地を選んで働いている人というのは遊園地の楽しい雰囲気が好きという人が多い。しかし、単に金のために働くにしてもこんなに笑顔と元気の無いスタッフはよっぽど見ない。朝方のコンビニの夜勤とタメ張れるぐらいの態度だ。コンビニ店員のほうがテキパキ動く分だけマシともいえる。

しかし、シニアの男性スタッフは驚くことに愛想がよかった。ものすごく差別的なことを言えば、シニアの男性というのは一般的にはかなり愛想の悪い属性であるのに、だ。私の近所のシルバー人材センターでは、よく警備員の仕事の募集が出ているが、その募集要項の全てに「横柄でない方」と書かれている。過去に何があったか、想像できるというものだ。

そんな中、なぜかレオマワールドのシニアの男性スタッフは全体的にニコニコ笑顔で接客してくれた。大学生のあのやる気の無さはなんなんだ。

 

・お化け屋敷

夜のアトラクション終了時刻ギリギリにお化け屋敷に入った私は考えていた。入り口には案内のスタッフが1人。そして、この日のレオマワールドの各アトラクションにいるスタッフの平均人数は1.7人だった。果たして、このお化け屋敷の中にはあと何人のスタッフが割けるのだろうか、と。

ネタバレしておくと、私が行った日にお化け屋敷の中で脅かしてくる人の人数は、0か1のいずれかであった。少ないんだよな。

 

 

○おわりに

一日を通して、「お金かけられないんだろうなあ」という寂しさを感じたテーマパークであった。

それもそのはず、2000年に経営破綻により一度閉園したことがある。それを地元企業らで買い取ってリニューアルオープンするものの主要企業である加ト吉循環取引をやらかしテーマパーク経営から離脱。2度も経営が傾きかけたのを大江戸温泉物語が買い取って現在に至る。

客が来なかろうが近鉄が存続を保障してくれるパルケエスパーニャとは経営状況がまるで異なるのだ。

 

そんなわけで、レオマリゾートは「100年先も、この場所に。」をキャッチコピーに掲げている。

であるならば、レオマワールドは、100年後もこの場所にあり続けられるよう、大幅に人件費を削り、細く長くやろうとしているのではないか?

経営状態が芳しくない中、それでも香川の子供たちに遊園地を残すための徹底したコストカットだと思えば、パレードが無いのも、人形が壊れたまま動かないのも、アトラクションのスタッフが足りてないのも許せるような気がしてくる。スタッフの愛想とやる気が無いのは必ずしも金の問題ではないが。

 

出入口の看板の、帰りにだけ見える側の面にそのキャッチコピーが書かれていた。

「100年先も、この場所に。」

2回も経営危機を起こしているテーマパークが言うと言葉の重みが違う。きっと心からの信念、理念なんだろうな、と帰り際に少しだけしみじみするのだった。